日銀展望レポートは為替相場にどう影響するか

 

■インフレ率を下方修正した日銀

下記のデータを見て頂くと分かる通り、日本銀行はインフレ率の見通しを下方修正しました。あまり強気ではないようです。確かに年を追うごとにインフレ率は上昇していく見通し(+0.8%⇒+1.4%⇒+2.3%)です。日銀の基本的見解を読むと、「2%到達は2019年度を見込む」っという主旨になっていました。ただし2019年は消費税増税(単純に1.851%物価が上がる)がインフレ率に関与しますし、景況感へ悪影響があるでしょう。インフレ率は思ったほど強まらず、出口戦略(恐らくはテーパリングが最初と思われる)は遅延すると思われます。そのように解釈できる内容でした。

2017年
実質GDP  +1.7%~+2.0%(中央値+1.9%)上方修正
 前回 +1.5%~+1.8%(+1.8%)
CPI除く生鮮 +0.7%~+1.0%(+0.8%)下方修正
 前回 +0.5%~+1.3%(+1.1%)

2018年
実質GDP +1.2%~+1.4%(+1.4%)
 前回 +1.1%~+1.5%(+1.4%)
CPI除く生鮮+1.1%~+1.6%(+1.4%)下方修正
 前回 +0.8%~+1.6%(+1.5%)

2019年
実質GDP  +0.7%~+0.8%(中央値+0.7%)
 前回 +0.7%~+0.8%(+0.7%)
CPI除く生鮮  +2.0%~+2.5%(+2.3%)
 前回 +1.4%~+2.5%(+2.3%)
消費税引き上げ除くCPI除く生鮮 1.5%~+2.0%(+1.8%)
 前回 +0.9%~+2.0%(+1.8%)

 

■インフレ率の下方修正は円相場にどう影響するか?

インフレ率の為替への影響は、原則として「インフレ率の下落(鈍化)は、通貨の下落へ向かう」となります。金利差理論のまま考えると、円安へのバイアスを強めます。特に利上げを進める米国との金利差は広がる可能性があり、日本で増税、米国で減税となればさらに広がるでしょう。長期目線ではドルが強いのは当然です。しかし、もう1つ短期(数週間)に目を向けると違う見解が出ると思います。

短期的には、「日本の景気は思ったより悪い」という考えが芽生えます。一般論として「好景気=インフレ上昇」という図式が成り立つ為です。ここに消費税増税の意識が加われば、インフレ鈍化がリスク回避の材料となるでしょう。その影響を考えておく必要があるのです。そもそも、インフレとは”上がりするから、急いで買わなければ…”という恐怖感が引き起こします。今でいれば、ビットコインがそうでしょう。あれが急騰(暴騰ですね)している理由は、”上がるから買う・買うから上がる・だから急いで買わねば”が基礎にあります。その心理に陰りが見えれば、壁のような下落(パニック相場)になります。

従って、短期と長期の2つの視点からインフレ率を考えなければなりません。1つの現象から2つ以上の相場を生み出すことが想定されるケースだからです。

 

■ドル/円を考える時、インフレ差と長期金利差を観察する

特にドル/円の話として進めますが、通貨ペアを考える時にはインフレ率の格差と長期金利の格差を考えなければなりません。現在、日本銀行は長期金利を制御しています。それを維持すると今日の発表でもありました。すると、長期金利は米国だけを、インフレ率は両国を観察し格差を観察しておかなければなりません。日本の消費者物価指数(除く生鮮)と米国のPCEコアデフレータを比較しておく必要があります。現在、両方とも米国の方が強いデータになっているのですが、その差が拡大するのか?縮小するのか?で為替相場に大きな変化が起きます。

今回の日銀発表は、拡大する可能性を示したものと理解できます。あくまで見通しとしてではありますが。ただし、米国でもインフレ率が伸びず苦しんでいる様子が見えます。もし、日本のインフレ率がジリジリ伸びて米国が据え置き程度だった場合、格差の縮小による円高相場となるでしょう。こうなる確率が一定量ある為、ドル/円が一方的に上昇しにくい構図になっています。

もし、ロシアゲートでトランプ政権が混乱し、減税法案の見通しが立たなくなるとします。すると、インフレ期待は鈍化し格差の縮小が起きるかも知れないのです。つまり、ロシアゲート問題もインフレの影響を持っているとなります。FRB議長に誰が成るかも同様に考える必要があるでしょう。